聖ドゥインウェン Santes Dwynwen
~ウェールズの恋愛の守護聖人~
情熱的な人が多いからでしょうか?
ウェールズには2月14日のバレンタイン・デーの
前にもうひとつ、1月25日に恋人たちの日、
セント・ドゥインウェンズ・デーがあります。
ウェールズの恋愛の守護聖人、
聖ドゥインウェン (Santes Dwynwen) の祝日です。
ドゥインウェンは5世紀に南ウェールズの
ブレコン・ビーコンあたりを支配していた
ブラッハン王の娘でした。
24人の王女たちのなかでいちばん美しく、
いちばんお転婆だったと言われています。
隣国の王子マエロンと恋に落ち、
将来を誓いますが、父王はすでに
彼女と別の人との縁組を決めていました。
夢破れたドゥインウェンは森へと出奔。
木立に囲まれた地面に伏せて
「彼を忘れさせてください」と
神に祈りながら、泣き寝入りしてしまいました。
すると夢の中に天使が現れ、「もうマエロンに煩わされることはないですよ。
神さまが彼を凍らせてくださったから」と告げます。
さらに天使は、神がドゥインウェンの3つの望みをかなえてくださると言って去っていきました。
でも、目覚めたドゥインウェンの望みは、優しい心の持ち主だったので、次のようなものでした。
1)凍ったマエロンを溶かし、生き返らせること。
2)自分のように悲しい思いをしないように、心から愛しあう恋人たちを神が守ってくださること。
3)父王の無理強いから逃れて、一生結婚せずにいられること。
そして望みがかなえられた
感謝のしるしとして
修道女となり、
恋人たちのために祈りながら
旅を続け、たどり着いた
北ウェールズのアングルシー島で浅瀬に浮かぶ小さな島に
教会を建てました。
この島がいま、サンドゥイン島
(Ynys Llanddwyn*)と
呼ばれるところで、
風雨にさらされた教会の遺跡が
残っています。
© Hawlfraint y Goron / Crown Copyright
また近くには聖なる泉があり、恋人たちがここを訪れると、
泉に棲む魚が、彼らの愛が成就するかどうか予言してくれるとか。
さらに泉は沸き立つことがあり、その光景を目にした恋人たちは
永遠の愛と幸運に恵まれるそうですよ。
実はこのセント・ドゥインウェンズ・デー、
わたしがウェールズで暮らしていた約30年前には
あまり知られていませんでした。
恋人たちがこの日を祝うようになったのは、
近年のウェルシュ・アイデンティティー、
つまりウェールズ人としての自覚や愛国心の
高まりによるもののようです。
となれば、この日にささやく愛の言葉も
ウェールズ語がいいですね。
I Love Youは、ウェールズ語で
Dw i'n dy garu di
(ドゥ イン ディ ガリ ディ)。
これにラブスプーンを添えれば、完璧です!
<もっとトリヴィア①>
*ウェールズ語でLlanは「~の教会」という意味。
つまりこの島は”ドゥイン(ウェン)の教会”という名前です。
ちなみにDwynwenとは”祝福された人生を過ごす者”という意味だとか。
<もっとトリヴィア②>
聖ドゥインウェンは病気の動物たちの守護聖人でもあります。
ペットの具合が悪いとき、彼女に祈ったらよくなるかもしれませんね。