プリンス・オブ・ウェールズ②
2022年9月10日に国王となられたチャールズ3世は、
皇太子時代、イングランド王位の男性継承者として
初めてこの称号を与えられたエドワード2世から数えて、
21番目のプリンス・オブ・ウェールズでした。
叙せられたのは9歳のときですが、
叙任式は20歳を過ぎた1969年7月1日に、
北ウェールズのカナーヴォン城で執り行われました。
エリザベス女王の言葉を借りれば、
「この称号が持つ意義や重要性を
充分に理解できる年齢になった」からでした。
さて、では、その意義や重要性とはなんなのでしょう?
式典のなかに、それらを探るヒントが
隠されているかもしれません。
まず叙任式に先立ち、チャールズ皇太子は、
西ウェールズの古都にあるアベラストウィス大学で数ヶ月間、
ウェールズの歴史とウェールズ語を学ばれました。
そして式典では、ウェールズ国民を代表してこの大学の学長が
英語とウェールズ語の両方で皇太子に忠誠を表明しました。
曰く、「ウェールズ公国は、その伝統と言語、願望と問題に、
殿下が個人的に関わってくださる時期の到来を待ち望んでまいりました。
そうしてくださるとの信頼と希求のもとに、われらは殿下をお迎えし、
忠誠を宣言いたします」と。
チャールズ皇太子も同じく二ヶ国語で返答されました。
ウェールズ語でのスピーチでは、「可能な限りウェールズとともにあることが
わたしの確固とした意向である」とおっしゃっています。
こうして見てみると、ウェールズの独自性を保ち、擁護するという役割が
プリンス・オブ・ウェールズには求められているようですね。
ただ、このようにウェールズ色の濃いセレモニーになったのは、
エリザベス女王のおじ、後のエドワード8世のプリンス・オブ・ウェールズ叙任式から。
カナーヴォン選挙区選出の政治家で後に英国首相にまでのぼりつめた
デイヴィッド・ロイド・ジョージの発案によるものでした。
ウェールズ国粋主義者の感情をなだめると同時に
英国への愛国心を鼓舞するためだったといわれています。
チャールズ3世は国王となられた最初の国民へのスピーチで、
長男のウィリアム王子を次の新しいプリンス・オブ・ウェールズに、
キャサリン妃をプリンセス・オブ・ウェールズに叙すると表明されました。
叙任式の式典はカナーヴォン城で行なわれるだろうと思われていたのですが、
ウィリアム皇太子は式典を行わないと決められました。
絢爛たるページェントを期待していただけに、
ちょっと、いいえ、かなり、残念です。
<もっとトリヴィア>
実は、ウェールズで2022年6月に行われたアンケートで
「チャールズ皇太子の後任となるプリンス・オブ・ウェールズを望むか?」
という問いに対して「はい」と答えたのは、半数に満たない46%でした。
「いいえ」が31%、「わからない」が23%。
今世紀に入ってウェールズ人としての自意識がますます高まり、
名ばかりとはいえ、首長にイングランドの王位継承者をいただくことを
よしとしない人も増えているのですね。
ウィリアム皇太子ご自身もこの情勢を鑑みたうえで、
派手な叙任式は行わないと 決定されたのでしょう。
この称号に付随する職務もスリム化するお考えのようで、
新時代のプリンス&プリンセス・オブ・ウェールズがどのような役割となるのか、
興味深いところです。